無償の愛
2003年2月25日==【大きなき】==================================================
“昔りんごの木があって・・・”
りんごの木はちびっこと仲良しだった。
ちびっこは毎日りんごの木の所に遊びに来た。
ちびっこは、木の葉を集め冠を作り森の王様を気取ったり、木に登ったり、
枝にぶら下がったりして遊んだ。
ちびっこは、りんごの実を食べたり、木とかくれんぼをしたりして遊んだ。
遊び疲れると木陰で昼寝もした。
ちびっこは、木が大好きだった。
“だから きも うれしかった”
ちびっこは少し大人になった
“きは たいていひとりぼっち”
ある日、少しおとなになったちびっこが、木の所に戻って来た。
木は言った。
『昔のように、木登りをしたり、りんごの実を食べて、楽しく遊んでいきなさい』
男は言った。
『もう僕は子供じゃない、買物をするお金が欲しい』と。
木は言った。
『お金は無いが、りんごの実をもぎ取って、街で売ればお金になるよ』
そこで男は、りんごの実をすべて もぎ取って行ってしまった。
“きは それで 嬉しかった”
男は更に年をとった。
そしてある日、男がもどって来た。
木は、体が震えるほど嬉しかった。
そして言った。
『昔のように、木登りをしたり、りんごの実を食べて、楽しく遊んでいきなさい』
男は言った。
『遊んでいる暇は無い、家族と住む暖かな家が欲しいのだ』と。
木は言った。
『家は無いが、この枝を切って使えば家を建てられるだろう』と。
そこで男は、枝をすべて切り払い、持っていった。
“きは それで 嬉しかった”
男は長い間もどって来なかった。
ある日、男がもどって来た。
木は言葉が出ないほど嬉しかった。
木は言った。
『ここで遊んでいきなさい』と。
男は言った。
『年はとるし、悲しい事ばかりで遊ぶ気にならない。舟に乗って遠くへ行きたい』と
木は言った。
『この幹を伐り倒し、舟を作ればいい』
そこで男は、木の幹を伐り倒し、舟を作って行ってしまった。
“きは それで 嬉しかった・・・”
“だけど それは ほんとかな・・・”
更に長い年月が過ぎた。
男はまたもどって来た。
木は言った。
『すまないがもうあげるものが何も無い。今の自分はただの古ぼけた切り株だ』と
男は言った。
『私ももう年をとって体も弱り、りんごの実もかじれないし、遊ぶこともできない。
もうたいして欲しいものもない。疲れ果てた。 座って休む静かな場所が欲しい』
木は精一杯背筋を伸ばして言った。
『この古ぼけた切り株が、腰かけて休むのにはいちばんいい。
腰をかけて休みなさい』と
“おとこは それに したがった”
“きは それで 嬉しかった”
“きは それで 嬉しかった”
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私が大好きな本の抜粋です。
絵本なので画が無い状態で上手く伝わるかわからないけれど、
何度読んでも涙が溢れ出てしまうわたしなのです。
大好きな人へ、ひたすら愛情を注ぐ木の切ない物語。
初めてこれを読んだ時 “こんな風に人を愛したい” と心から感じた。
タイトルを【無償の愛】としたけれど、それは違うのかもしれない
彼が喜んでくれる事 満足してくれる事が、私への一番の報酬なのだから
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